2024年ノーベル文学賞発表！「ハン・ガン（韓江）さん」～代表作「菜食主義者」～

　2024年ノーベル文学賞が韓国人作家「ハン・ガン（韓江）さんに授与されることが10日にスウェーデン・アカデミーから発表されました。

ハン・ガン（韓江）さん　1970年韓国南西部の光州生まれ

1993年文壇デビュー（詩を発表/19994年に短編小説で韓国に文学賞を受賞/2005年に李箱文学賞/2016年には小説「菜食主義者」で英ブッカー国際賞をアジアの作家として初受賞した。

　ノーベル文学賞は、世界中の文学愛好者や作家にとって、最も権威ある賞の一つです。毎年、選ばれた作家は、その文学的功績が認められ、世界中から称賛を浴びます。

　しかし、この栄光の背後には、どのような成り立ちがあり、どのような意図が込められているのでしょうか？この記事では、ノーベル文学賞の歴史や特徴、近年の動向に焦点を当て、文学が持つ力とその意義を探ります。

ノーベル賞の成り立ち：平和の象徴としての賞

　ノーベル文学賞の歴史は、スウェーデンの科学者アルフレッド・ノーベルに遡ります。彼はダイナマイトの発明で知られる実業家であり、軍事技術にも寄与していました。

　しかし、ある日、自分の死を誤報された新聞記事で「死の商人」と呼ばれたことで、彼の人生観が変わりました。ノーベルは自分の遺産を人類の幸福のために使いたいと考え、1895年に「ノーベル財団」を設立しました。

　この財団の遺言には、物理学、化学、医学、平和、そして文学という5つの分野で毎年優れた業績を残した者に賞を贈ることが明記されています。

　特に文学賞は、科学技術の進歩だけでなく、人間の精神や文化の発展にも大きな影響を与えるものであり、ノーベルが強く支持した分野でした。

　彼は、言葉や物語が人々の考え方や行動に影響を与え、平和な社会を築く手助けとなると信じていました。そのため、ノーベル文学賞は、単なる優れた物語の創造者ではなく、人類の理解や共感を促進する力を持つ作品を表彰するものとされています。

　ノーベル文学賞の選考は、スウェーデン・アカデミーが担当しています。この機関は18人のメンバーで構成され、毎年世界中の作家や詩人、劇作家から候補者を選びます。

　候補者は、文学界の専門家や大学教授、過去の受賞者などによって推薦され、その後アカデミーのメンバーが数か月にわたって議論を重ね、最終的に一人または複数の作家が選ばれます。

選考基準としては、以下の要素が重要視されています。

　この選考プロセスは、秘密裏に行われ、受賞者が発表されるまでは一切公表されません。この厳粛なプロセスが、ノーベル文学賞の権威をさらに高めています。

　ノーベル文学賞の受賞者は、世界文学の中で名を残す存在となります。過去には、トルストイやヘミングウェイ、ガルシア・マルケスといった名だたる作家が受賞しています。

　彼らの作品は、社会や文化の枠を超えて読み継がれ、文学が持つ普遍的な力を証明してきました。

　例えば、2021年に受賞したタンザニア出身の作家アブドゥルラザク・グルナは、移民や難民の視点から描く作品で注目を集めました。彼の物語は、故郷を失った人々の苦悩や希望を描き出し、現代の世界における人間の居場所とアイデンティティを考えさせる力を持っています。

　また、2016年にはアメリカのシンガーソングライター、ボブ・ディランが受賞したことが話題を呼びました。彼の受賞は、歌詞という形式が文学の一形態として認められた瞬間でもあり、文学の定義を拡張する革新的な出来事でした。

　近年、ノーベル文学賞は多様性やジェンダー平等、国際的な視点に重きを置くようになりました。これにより、非西洋圏の作家や女性作家がより多く受賞するようになっています。

　例えば、2015年に受賞したベラルーシの作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチは、ジャーナリズム的手法を用いたドキュメンタリー文学で知られ、戦争やチェルノブイリ事故などの社会的なテーマを扱った作品で評価されました。

　このような変化は、文学が単なるフィクションにとどまらず、社会や政治への批評、さらには人類の未来に関する議論の場となっていることを示しています。ノーベル文学賞は、文学が世界を変える力を持っていることを証明し続けています。

　ノーベル文学賞は、文学を通じて人々に深い感動や洞察を与えるだけでなく、社会的な変革をもたらす力を持っています。

　アルフレッド・ノーベルが遺した遺言は、今もなお文学界に大きな影響を与え、作家たちに新たなインスピレーションを与え続けています。

　言葉が持つ力を信じ、人々の心に訴えかける物語を生み出すことが、これからもノーベル文学賞の使命であり続けるでしょう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり